初コーボー

「読まず嫌い」というものがある。
「食わず嫌い」と似たようなものだ。
何度か食べてみて苦手になったものではなく、
一度も経験していないくせに、
それを食べたら何か悪影響があるのではないかという
不安や恐怖といった自分勝手なイメージによる躊躇、拒絶。
しかし、消極的ではあるが好奇心は残っている。
その挑戦の先に、「やめられないとまらない」な
地平があるかも知れない。
とは云ったものの、虫は食えないな。虫だけは....。

安部公房「第四間氷期」を読む。

「読まず嫌い」だった安部公房の作品を初めて読んだ。
まだ幼い頃、テレヴィでやっていた映画「砂の女」を
食い入るように観ていた親父の横で、
子供ながらにその奇妙さと白黒ゆえの妄想で
「安部公房 イコール 恐い」となってしまい、
それから何度か、いろんな方から推薦をうけたものの、
なかなか読めずにいた。
今頃になって、虫が起こったのだ。

安部公房「第四間氷期」は、五十年程前に書かれたものだが、
現代に共鳴する、その近未来との不穏ともいえる距離に
あまり誤差がないのではと感じる背景と、
登場人物たちの立ち位置や思い、
または、それぞれの哲学や思想といった模様が織り成す、
面白くも考えさせられる、バックラッシュを放つ小説だった。

安部公房が「やめられないとまらない」ものになって、
次に何を読もうかと思っているが、
「砂の女」は後回しにしようと、やっぱり思う。

ちょっとした本の虫かもしれないが、
虫はやっぱり食えないなと思う。